LIT(Lighter)は本当に過小評価か?perps DEXのバリュエーションを検証
Lighter(LIT)はHyperliquidの約1/5の出来高で収益倍率は3分の1。Delphiが説く「過小評価」論を、トークノミクス・アンロック・利益相反まで含めて客観的に検証します。
LIT(Lighter)は本当に過小評価か?perps DEXのバリュエーションを検証
Key Takeaways
- Lighter(ライター)は Ethereum 上の zk証明型 perps DEX(perps=無期限先物、DEX=分散型取引所)です。リテール手数料はゼロ。出来高で Hyperliquid の約1/5を取りながら、LIT の revenue(収益)倍率は約20〜25倍で、Hyperliquid(HYPE)の約70倍より安く見えます。これが Delphi の Flip と Will Price が説く「過小評価」論の核心です。
- ただし、その「安さ」は時価総額ベースの話にすぎません。FDV(完全希薄化後評価額)は約 $1.72B、流通しているのは総供給の25%だけです。しかも2026年12月下旬から、チーム・投資家分(供給の50%)のアンロックが始まります。希薄化を織り込むと、割安感はかなり薄れます。
- もうひとつ見落とせないのが発信者の立場です。強気論を主導する Will Price は Lighter のアドバイザーで、利害が一致しうる位置にいます。提示された数値(倍率・出来高・バイバック)は概ね検証できますが、「割安」という解釈はポジショントークの可能性を踏まえ、読者自身が独立に判断すべきです(本記事は投資助言ではありません)。
Lighter(LIT)とは——zk証明型の perps DEX
Lighter(ライター)は、Ethereum 上に構築されたアプリ特化型 zk-rollup(ゼロ知識証明ロールアップ:取引の正しさを暗号学的に証明しつつ、処理自体はオフチェーンで行う仕組み)の上で動く、オーダーブック型の perps DEX です。perps とは perpetual futures、満期がなくファンディングレートで現物価格に連動させる無期限先物のこと。DEX は中央管理者のいない分散型取引所を指します。トークンは LIT で、2025年12月30日に TGE(Token Generation Event:トークン発行)を実施しました。
特徴は2つあります。まず、リテール(一般ユーザー)口座の取引手数料がゼロであること。そして、すべての約定・清算をゼロ知識証明で検証する透明性です。中央集権取引所(CEX)の板はいわばブラックボックスですが、Lighter は「板が価格・時間優先のルール通りに動いたこと」をオンチェーンで証明できる設計を打ち出しています。
公式サイト:lighter.xyz
Hyperliquid(ハイパーリキッド)の機関向け商品化の動きは、グレースケールのHYPE現物ETF「HYPG」上場の解説記事で扱っています。Lighter はこの Hyperliquid の最有力対抗馬として語られる存在です。
技術的な仕組み——なぜ「速い・検証可能」なのか
Lighter の中核は、独自 zk-rollup の「zkLighter」です。約定・ファンディング・リスクチェック・清算といった重要処理をすべてゼロ知識回路に符号化し、Ethereum が「Lighter のルールに従ったか」を検証してから状態更新を受理します。主要コンポーネントは3つです。
| コンポーネント | 役割 |
|---|---|
| Sequencer | 低遅延の実行エンジン。注文を FIFO(先入れ先出し)で処理しブロックを生成 |
| Prover | 各ブロックがルール(価格・時間優先、証拠金・清算の計算)を守ったことを示す zk-SNARK 証明を生成 |
| Smart Contracts | ユーザー担保と正規の状態ルートを保持し、証明を検証。入出金を処理 |
差別化の肝は次の3点です。1つ目は Order Book Tree。Merkle Tree と Prefix Tree を組み合わせたハイブリッド構造で、ゼロ知識回路の中で従来のリンクリストが抱える非効率を解消しています。2つ目は低レイテンシで、オーダーブックの約定遅延は約200ミリ秒とされ、Hyperliquid に匹敵するか、やや上回る水準です。3つ目はエスケープハッチ。Sequencer が不正を働いても、ユーザーは暗号学的に Ethereum へ資産を引き戻せます。
さらに Lighter は、オーダーブックに RFQ(Request for Quote:相対見積もり方式)を併設し、複数の執行モデルを同時に走らせる初の取引所とされています。
トークノミクス——供給・バイバック・アンロック
LIT の総供給は10億 LIT(上限固定)で、配分は次の通りです。
| 配分先 | 割合 | 条件 |
|---|---|---|
| エアドロップ | 25% | TGE時に Points 参加者へ配布(ベスティングなし) |
| Future Ecosystem | 25% | 今後のポイントシーズン・提携・RWA インセンティブ用 |
| チーム | 26% | 1年クリフ+複数年ストリーミング |
| 投資家 | 24% | Founders Fund・Ribbit・Dragonfly 等。同じ1年クリフ |
| パブリックセール | <1% | 2025/12/24 MEXC Launchpad IEO($2.00) |
ここで効いてくるのがアンロック(ロック解除)のスケジュールです。いま流通しているのは総供給の25%(2.5億 LIT)だけ。残りのうち、チーム26%と投資家24%を合わせた供給の50%が、2026年12月下旬からアンロックを始めます。これは長期にわたる供給オーバーハング、つまり売り圧の重しになります。
価値還元の柱はバイバックです。Lighter はプロトコル収益(DEX 手数料の50%+将来サービス収益)を使って、オープンマーケットで LIT を買い戻しています。集計では累計バイバックが TGE 以降で $17.9M、うち Q1 2026 だけで $14.6M、年換算のプロトコル収益は約 $26.5M とされます。2026年2月発表の Circle 提携が効けば、年換算で約$40M の追加収益が見込まれるという試算もあります。
ここで頭に入れておきたいのが、この買い戻し圧とアンロック売り圧の力関係です。年$26.5M の収益のうち仮に半分をバイバックに回しても、規模は年$13M ほど。一方、2026年12月以降に解ける供給は最大5億 LIT で、時価なら数億ドル規模になり得ます。「バイバックがあるから希薄化は問題ない」とは言い切れません(概算)。
注:バイバック金額は計測時点で大きく変わります。プログラム開始直後(2026年1月初旬)には約 $550,000 規模との報道もありました。本記事の累計値は四半期集計ベースです。
「過小評価」論の検証——Delphi/Will Price の論拠とその反証
Bankless 掲載の記事(著者:David Christopher、寄稿:Will Price と Delphi の Flip)が説く「LIT は過小評価」論は、次のバリュエーション比較を骨子にしています。
| 指標 | LIT (Lighter) | HYPE (Hyperliquid) |
|---|---|---|
| revenue 倍率(時価総額÷収益) | 約 20〜25倍 | 約 70倍 |
| クリプト出来高(対 Hyperliquid 比) | 約 1/5(20%) | 1.0(基準) |
| 直近四半期のトークン買い戻しペース | Hyperliquid の約4倍 | 基準 |
論旨はこうです。Lighter は出来高で Hyperliquid の約2割を取っているのに、収益倍率は約3分の1。同じ収益1ドルに市場が払う値段が、Lighter のほうが安い。倍率だけを並べれば、確かに割安に映ります。
ただ、この論拠には鵜呑みにできない点が3つあります。
1つ目。安い倍率は「割安」とは限りません。倍率の低さは、成長が続くかどうかへの市場の懐疑を映している可能性があります。Hyperliquid に約70倍が付くのは、perps DEX 出来高シェア約44%という支配的地位へのプレミアムです。Lighter の20〜25倍は、いつでも逆転され得る2番手への割引とも読めます。事実、Lighter は2026年1月に30日出来高で Hyperliquid を一度上回りました($198B vs $166B)。けれどその後また抜き返され、5月29日時点の24時間出来高は Hyperliquid $7.47B に対し Lighter $1.66B でした。「1/5」は固定値ではありません。
2つ目。「安さ」は時価総額ベースの話で、FDV で見れば薄れます。2026年6月4日の急騰時点で LIT は価格約 $1.72、時価総額約 $430M。ところが FDV は約 $1.72B です。供給の50%が2026年12月から解けることを思えば、完全希薄化後の割安感は大きく後退します。数日前には価格約$1.06・時価総額約$265M・FDV 約$1.06B という集計もあり、評価は計測時点に強く左右されます。
3つ目。発信者の利益相反、いわゆるポジショントークです。強気論を主導する Will Price は Lighter のアドバイザー、共同寄稿の Flip は Delphi の perps アナリストです。どちらも LIT 上昇で利益を得うる立場にあり、「割安」という結論は彼らの利害にきれいに整合します。提示された事実(倍率・出来高・バイバック)は概ね検証できます。でも、その解釈はポジショントークの可能性を念頭に受け取るべきです(両者の LIT 保有有無は記事に明記されておらず未確認です)。
競合比較とリスク・懸念点
| プロジェクト | 立ち位置 | 24h出来高(2026/05/29) |
|---|---|---|
| Hyperliquid (HYPE) | 最大手。自前 L1・バリデータ運用エンジン | 約 $7.47B |
| ApeX | オーダーブック型 perps DEX | $1.78B |
| EdgeX | 高速 perps DEX | $1.75B |
| Lighter (LIT) | zk証明型オーダーブック、手数料ゼロ | $1.66B |
出典:Phemex
リスクは整理すると5つです。
- アンロック希薄化。2026年12月下旬から供給の50%(最大5億 LIT)が解け始めます。前述の通り、バイバック原資(年約$26.5M 収益ベース)で相殺しきれない可能性が高いとみています(概算)。
- 出来高の持続性。ポイントやエアドロップ施策のあとのチャーン(離脱)が指摘されており、日次収益が2025年11月21日の $1.5M から12月には $150K まで縮んだ局面もありました。
- 競合の再逆転。一度は Hyperliquid を出来高で抜いたものの抜き返されており、流動性の差を埋め続けられるかは読めません。
- Sequencer の集権性。約定の正当性は zk 証明で担保されますが、Sequencer そのものは当面は中央集権的で、完全な分散化には時間がかかります。
- ポジショントーク。強気論の発信者が Lighter と利害を共有している点は、繰り返しになりますが押さえておくべきです。
上振れ要因もあります。RWA(実物資産)perps の拡張です。Dell・IBM 等の株式 perps、SpaceX プレIPO、Nvidia H100 の上場で先行しています。加えて米国規制の DEX 開放(Lighter は USDC 決済・Delaware C-corp)も追い風です。RWA トークン化の文脈は、OndoのRWAスマートマネー分析記事も参考になります。
まとめ・投資判断の視点
Lighter(LIT)は、zk証明と手数料ゼロという明確な武器を持つ有力な perps DEX です。revenue 倍率(約20〜25倍)だけを見れば、Hyperliquid(約70倍)より割安に見えます。Delphi/Will Price の「過小評価」論も、この倍率・出来高シェア・バイバックペースという検証可能な事実に支えられています。
問題は、その「安さ」が時価総額ベースの評価だという点です。FDV $1.72B と2026年12月からの50%アンロックを織り込むと、割安感は大きく後退します。出来高シェアの「1/5」も、Hyperliquid に抜き返されるなど固定ではありません。そして強気論の主導者が Lighter のアドバイザーであるという利益相反は、結論を鵜呑みにできない理由になります。
だから「割安か割高か」は条件付きでしか言えません。時価総額ベースで、出来高が伸び続ける前提なら割安寄り。FDV・アンロック・出来高の持続性を重く見るなら、評価は中立から慎重へ振れます。どちらの前提に立つかを、自分で決める必要があります。
免責事項:本記事は情報提供を目的とした分析であり、投資助言ではありません。仮想通貨・トークン投資は元本を失うリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。
よくある質問(FAQ)
Lighter(LIT)とはどんなプロジェクトですか?
Ethereum 上の zk-rollup(ゼロ知識証明ロールアップ)で動く、オーダーブック型の perps DEX(無期限先物の分散型取引所)です。約定・清算をゼロ知識証明で検証し、リテール口座の取引手数料はゼロ。トークンは LIT で、2025年12月30日に発行されました。
なぜ LIT は「過小評価」と言われているのですか?
Lighter が Hyperliquid の約1/5の出来高を取りながら、LIT の revenue 倍率が約20〜25倍と、HYPE の約70倍より低いためです。ただしこれは時価総額ベースの比較で、FDV(約$1.72B)や2026年12月からのアンロックを考えると割安感は薄れます。
LIT の「過小評価」論はそのまま信じてよいですか?
提示された数値(倍率・出来高・バイバック)は概ね検証できます。ただ、強気論を主導する Will Price は Lighter のアドバイザーで、利害が一致しうる立場です。事実と解釈を分け、ポジショントークの可能性を踏まえて独立に判断することをおすすめします。
LIT の最大のリスクは何ですか?
2026年12月下旬から始まる供給の50%(チーム+投資家分)のアンロックによる希薄化です。バイバック(年約$26.5M 収益ベース)の買い圧で相殺しきれない可能性があります。Hyperliquid への出来高再逆転、ポイント施策後のチャーンによる出来高・収益の変動も懸念点です。
Lighter と Hyperliquid の違いは何ですか?
Hyperliquid は自前 L1 上でバリデータ運用エンジンを「信頼してもらう」モデル、Lighter は zk 回路でルールを符号化して「証明する」モデルです。出来高シェアは Hyperliquid が首位(2026年5月時点で約44%)で、Lighter は手数料ゼロと検証可能性で差別化しています。
出典
- Bankless「Is LIT the Most Underpriced Perps Bet in Crypto?」(バリュエーション論・倍率・出来高比・RWA拡張・利益相反) — https://www.bankless.com/read/is-lit-the-most-underpriced-perps-bet-in-crypto
- CoinGecko「Lighter (LIT)」(価格・時価総額・FDV) — https://www.coingecko.com/en/coins/lighter
- Datawallet「Lighter Explained」(TGE・トークノミクス・アンロック・バイバック累計・Circle提携) — https://www.datawallet.com/crypto/lighter-explained
- Lighter Whitepaper(zkLighter・Sequencer/Prover・Order Book Tree・エスケープハッチ) — https://assets.lighter.xyz/whitepaper.pdf
- KuCoin「Lighter Surpasses Hyperliquid in 30-Day Perpetual Volume」($198B vs $166B) — https://www.kucoin.com/news/flash/lighter-surpasses-hyperliquid-in-30-day-perpetual-volume-with-198-billion
- Phemex「Hyperliquid Hits Record Open Interest」(24h出来高・出来高シェア44%・競合比較) — https://phemex.com/news/article/hyperliquid-hits-record-open-interest-post1011-crash-tradexyz-leads-perp-dexs-86509
- CCN「Lighter (LIT) Live Price, Project, Airdrops, Supply」(日次収益の変動・Sequencer集権性) — https://www.ccn.com/analysis/crypto/lighter-crypto-lit-live-price-project-airdrops-supply/
- ainvest「Lighter Launches Buyback Program」(プログラム初期のバイバック規模) — https://www.ainvest.com/news/lighter-launches-buyback-program-dex-fees-repurchase-lit-tokens-2601/
- Lighter 公式サイト — https://lighter.xyz/
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